第92回 カフェで学ぼうがんのこと「がん治療におけるアピアランスケアの重要性」

知っていますか?「がん相談支援センター」

「がん相談支援センター」は、全国のがん診療連携拠点病院などに設置されている、がん相談窓口です。

全国に393か所、福岡県には、久留米大学をはじめ19か所あります。その病院に通院していなくても、患者さんや家族を問わず、どなたでも匿名かつ無料で相談できます。

相談の内容を利用者の承諾なしに医療者に伝えることはありません。安心して相談できますので多くの方に知っておいていただきたいです。

アピアランスケアとは、「アピアランス」=外観や人の容貌・外見 「ケア」=手当・世話・ケア

がんと診断されると患者さんやその家族は、治療・身体・精神・暮らしなどに様々な悩みを抱えます。

がんの治療法や抗がん剤の種類が増えたことにより、約10年前と現在では、悩みの内容に少し違いが生じてきています。

「アピアランスケア」というとかつらやメイク、爪やスキンケアなど、外見だけを重視するように思われがちですが、外見だけではカバーできない、手術跡の形成や皮膚科的な治療をする医療的なケア、社会復帰支援や他者との関わりを持てるようにする心理的なケア、といったその方の背景を含めた社会復帰の支援をすることをアピアランスケアと考えています。

なぜ今、外見ケアに関心が集まるのでしょう?

支持療法(抗がん剤の吐き気止めや、辛さを軽減する治療)で身体的負担が軽減されたことにより外見などの心理社会的なことに気が向けられるようになったことと、入院期間の短縮などが進み、普通に生活を送りながら治療を続ける人が増えているということがあります。

そしてこれは、外見のみを重視するのでなく、外見ケアを通じてQOL(生活の質)を向上させる取り組みであり、どんな選択だとしても患者さんの味方であってほしい!ということをご家族の方へもお伝えしたいと思っています。

最近明るい感じのかつらのCMが増えています。症状のカバーというよりは、加齢による薄毛をおしゃれに対策しようという社会の流れになってきたと感じます。

がん患者さんのアピアランスケアとは、外見の変化による苦痛を軽減することや患者さんと社会とのつながりをサポートして患者さんが自分らしく過ごせるように支援することです。

医療者、美容専門家、企業により支援の方法は異なります。医療者の立場から、研究で証明された解決方法が実はほとんどないのが現状です。しかし、多くの患者さんと接した様々な経験や医療者として発信すべき情報をお伝えします。

「副作用がでます」と言われたら…

「あせらない」、「あわてない」、「惑わされない」、「少しの工夫と練習」、「ほんの少し丁寧に」、「症状は人さまざま」です。

医療者に、自分の薬によってどのような症状が生じるか聞いてみましょう。副作用には、自分で分かる副作用と検査で分かる副作用があります。

「髪が抜けます」と言われたら…

多くの場合、1回目の治療後2~3週間後から頭髪が抜け始めます。治療法や人により脱毛の程度は異なるので、主治医や看護師に「どの程度でいつごろから脱毛が始まるか」を聞きましょう。高いウィッグを買わなくてもよいし、ウィッグを使わないという選択もあります。

ウィッグの選び方は、「予算」、「かぶり心地」、「自分に似合うか」です。自分に合うものが見つからなければ、「ウィッグをカットして自分に似合うようにする」、「ウィッグリング・ジャパンでレンタル」という方法もあります。

男性の方は、ウィッグを準備しない方も多いです。伊達眼鏡をかけて視線を変えることもできます。気になる方はもちろんウィッグでカバーしてよいのです。

(経験者の声)
・脱毛の時期は期間限定なので帽子で過ごしました。
・1万円くらいのウィッグを2か月ごとに購入し、自分の好みをとことん探しました。

眉毛・まつ毛が抜けますと言われたら…

眉毛やまつ毛は、髪より後に抜けることが多いです。眉は描けるので、脱毛する前に自分の写真を撮っておいて、写真を見ながら描くのも良いですし100円ショップにもある眉のテンプレートを使って描いても良いでしょう。

まつ毛は、うっすらアイシャドウをすることでカバーにもなります。眼鏡は、ごみや汗から目を守るまつ毛の役割もします。

「肌に影響が出ます」と言われたら…

基本は「清潔・保湿・刺激を避ける」です。

特別な製品を使う必要はほとんどなく、刺激から肌を守ることが大事です。石鹸や洗顔料をよく泡立てて洗い、保湿剤をしっかり塗るなどの日常のスキンケアが大切です。

紫外線対策は、日焼け止めを日常使いにしましょう。SPF15~30で十分です。日焼け止めは少なめに使いがちですが、指の第一関節の量で両手の手のひらの面積をカバーできる量が目安です。たっぷり塗りましょう。

分子標的治療薬を使用している方は「ざ瘡様皮疹」、「手足症候群」、「放射線皮膚炎」、「色素沈着」などの症状で特別なケアが必要になることもありますが、そのような時は必ず医療者から患者さんにお伝えするので、あせらず対処しましょう。症状が出る前からしっかり保湿することが重要です!

肌の症状は命に係わる事ではないので、我慢している人が多いのが現実です。ほんの少しの工夫で楽になることもありますので遠慮せずに医療者に伝えてください。

(経験者の声)
・保湿タイプの入浴剤を入れて肌しっとり、リラックス。
・保湿剤を背中に塗りたいが届かない1人暮らしの方などは、孫の手のような形で塗ることのできる道具もあります(薬局などに売っている)。
・病院の保湿剤では物足りないので、今まで使っていた化粧品の保湿剤も使いました。
・T字の髭剃りより、電動髭剃りのほうが肌荒れしにくいです。
・入浴は熱すぎるお湯を避け、入浴後すぐに保湿をしました。

「爪に影響が出ます」と言われたら…

爪も乾燥が大敵ですので、肌と同様に清潔と保湿、そして保護が大切です。

ハンドクリームや保湿剤を指先までたっぷり塗りましょう。陥入爪になりがちですので、爪先までしっかり保湿をしましょう。

また、テーピングなどで苦痛を和らげることも出来るので、医療者にご相談下さい。二枚爪の原因になるため、爪切りではなくやすりを使って爪を整えましょう。

ベースコート、トップコートも爪が割れやすいときに効果的です。爪の先が二重になった時は、手袋をして家事をしましょう。色素沈着が気になるときは、濃い色のマニュキア、なかでも茶色っぽい赤のマニキュアが意外に肌なじみがよいです。

(経験者の声)
・釣りが趣味ですが爪が割れて餌がつけられず困っていましたが、妻のマニュキュアのトップコートを何度も重ね塗りして補強し釣りを楽しめました。
・巻き爪が痛いので窮屈な靴を履かないようにしました。

まとめ

自分で出来る予防もたくさんあります。

日頃のケアを習慣化し、副作用を少しでも遅くすることもできます。無理なく日常生活に取り入れましょう。

これらの外見の困りごとは命に直結しないからと我慢する方がたくさんいますが、患者さんやその家族の周りには医療者をはじめ相談できるプロがたくさんいます。ほんの少しの工夫で楽になることもあります。我慢せずに気軽にご相談ください。

がん相談支援センターも皆さんの伴奏者として寄り添いサポートしていきたいと思っていますので、ぜひ活用してください。

参加者の感想

・がん相談支援センターはその病院に通院している人だけが対象だと思っていました。誰でも気軽に相談できることを知れて良かったです。
・美容師です。お客様から治療中の悩みを相談されることもあります。医療的な事は答えられませんでしたが、これからはがん相談支援センターを紹介できるので喜ばれると思います。

 日  時 :2020年3月18日(水) 15:30〜17:00
 講  師 :廣畑紀世先生(久留米大学病院腫瘍センター(がん相談支援センター)看護師がん専門相談員)
 会  場 :場所:コロナウィルスの影響で初めてオンラインサロンにて開催致しました。

※今後の医療セミナーの予定はこちら

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