第93回 カフェで学ぼうがんのこと「リンパ浮腫」

リンパ液・リンパ管について

体内には動脈・静脈と呼ばれる血管以外にリンパ管が血管の近くにあります。

心臓から出た動脈血の9割は静脈血となり再び心臓へ戻り、残り1割はリンパ液となりリンパ管を通って静脈と合流。リンパ液には、細胞の老廃物、白血球、タンパク質成分が多く含まれます。

リンパ浮腫とは

がん治療によるリンパ節の切除や傷、がんのリンパ節転移により、リンパ液の流れが悪くなり生じるむくみです。

手術以外では、放射線治療、外傷、先天的なリンパの発育異常などが原因です。

発症部位は、乳がんでは手術をした側の腕、子宮がん・前立腺がんなどでは左右どちらかまたは両側の脚などです。

発症時期は、手術直後から数年~数十年後まで、個人差があります。

リンパ浮腫の症状

むくみや皮膚の厚みの変化、血管の見え方の変化や皮膚の張り・乾燥・硬さ、発症部位のだるさ・重さ・疲れやすさ・違和感、腕に発症した場合には肩こり、皮膚の色調変化です。

リンパ浮腫は一般的には痛みを伴わないとされますが、感染やむくみが急に進むなど悪化することで、突っ張った感じ、引っ張られる感じ、ピリピリするなどの痛みが生じる場合があります。

リンパ浮腫の予防

発症してからの治療より、予防が大事です。

むくむ可能性のある部位の皮膚を傷つける、一度に大きな負担をかける事がきっかけで発症することがありますので、日常生活での予防が必要です。むくみが起こりやすい腕や脚全体を見たり、つまむことなく優しく手で触ったりしてむくみがないかを確認します。

  • アルコール分・香料不使用の保湿剤を利用してのスキンケア
  • 皮膚を傷つけないよう、深爪・脱毛をしない
  • ガーデニングの際にはしっかり保護する
  • ペットによるひっかき傷に用心
  • 皮膚への強い刺激に注意するため、紫外線予防の日焼け止め・日傘等を使う
  • しもやけに注意
  • 夏場は蚊に刺される、冬場はホットカーペット上でのうたた寝やカイロでの低温やけどに注意
  • 局所的な圧迫を避ける。ゆとりのある服を着る、乳がん治療をした場合には、治療した側での腕枕、血圧測定や採血・点滴などをしない。子宮がん・卵巣がん・前立腺がんなどでは、正座をしない、きつい靴を履かない
  • 体を酷使しない。買い物などではキャリーカートなどを利用。長時間の立ち仕事、過労を避ける。長時間じっとしない。腕や脚を下げたままにしない。適度な運動をする。頻繁に脚を椅子にのせたり、腕・脚の曲げ伸ばしをする
  • 水虫の予防・治療をする
  • はり・お灸・指圧を行わない。湿布のかぶれにも注意
  • 家事対策をして、手荒れ・傷に注意する。揚げ物の際には袖の長いものを着る、洗い物の際にはゴム手袋を装着する
  • 長時間の温泉やサウナ、熱いお湯での長時間の入浴を避ける
  • 体重をコントロールする。体重が増えるとリンパ浮腫も悪化する

蜂窩織炎(ほうかしきえん)について

リンパ浮腫患者さんが一番気を付けたい病気です。

皮膚の深層から皮下脂肪組織にかけて細菌に感染し、化膿性の炎症が起こる病気で、赤い斑点や皮膚の赤み、38度C以上の発熱といった症状があり多くは細菌感染によるものです。

また、過度の疲労やストレスが引き金になることもあると話す医師もいます。蜂窩織炎をきっかけにリンパ浮腫を発症することもあります。治療法は、抗生剤の投与・冷却・安静であり、症状が出た場合には早めに医療機関を受診してください。

リンパ浮腫の治療方法

むくみが発症したらすぐに主治医に相談してください。

治療方法には複合的理学療法、用手的リンパドレナージ・圧迫療法・運動療法・スキンケアの4つを組み合わせた治療法があります。

・用手的リンパドレナージ
皮下組織に溜まったリンパ液をマッサージにより正常に機能しているリンパ管に誘導します。やわらかい圧迫力で十分です。一般的に行われるマッサージや美容目的のリンパドレナージとは目的・手技が異なり、専門的な知識や技術を持つ医療者の指導下で行う必要があります。

・圧迫療法
むくんだ部分を圧迫することで、リンパ液が毛細血管から漏れ出ることやリンパ管にとどまることを防ぐ効果があります。弾性着衣(ストッキングやスリーブ)、弾性包帯(バンデージ)を使用します。発症早期であれば、弾性着衣で十分効果が得られると思われます。合わない弾性着衣の着用や無理な圧迫療法は、症状の悪化や炎症を起こす原因となります。必ず専門的な知識と技術を持つ医療者の指導下で行う必要があります。

・運動療法
弾性着衣や弾性包帯などでむくんだ部位を圧迫した状態で運動を行います。運動により筋肉の収縮と弛緩を繰り返すことで、リンパの流れが良くなります。強い力がかかる運動や過度の運動は体の負担となり、むくみを悪化させる原因になるので注意が必要です。

・スキンケア
保湿をすること、入浴時は強くこすらないです。

リンパ浮腫に対する手術(リンパ管静脈吻合術)

脚からのリンパ液は、脚の付け根、鼠径リンパ節を通り、腹部・胸部を経由して左鎖骨裏側にある静脈と合流して心臓に戻ります。手からのリンパ液は、腕を経由して腋窩リンパ節を通り、左右の鎖骨面側にある静脈と合流して心臓に戻ります。手術によるリンパ節郭清によりリンパの流れが妨げられると、リンパ液が手足に溜まりむくみが現れます。

リンパ管静脈吻合とは、リンパの流れの渋滞(たまり)にバイパスを作って心臓に戻すことで、リンパ節を迂回するルートを手術で作ります。

手術は、局所麻酔で2cm程度の皮膚切開で行い、顕微鏡下で0.3~1.0mm程度のリンパ管と静脈を吻合します。硬かった部位がやわらかくなり、手術した手足の径が細くなることがあります。

ごく稀に圧迫療法が不要となることや蜂窩織炎の炎症回数が減るとの報告があり、リンパ浮腫の進行を抑えることができると考えられています。手術時間が2~4時間と比較的長いですが、局所麻酔での施行で傷が小さく目立たず、体に優しい手術で、大きな合併症はありません。

しかし、稀に傷が目立つ体質の人がいます。また、傷の治りが悪い人やばい菌による炎症を起こした場合は抗生剤投与などで治療が長引くことや思った効果が出ない人、特にリンパ浮腫が進行した場合は、効果が出ないことがあり、ごく稀に術後浮腫が悪化する人がいます。

参加者と先生の質疑応答

Q.リンパ浮腫はどこで診てもらえますか?
A.多くの病院で手術した患者さんを診てくれますので、まずは手術担当医に相談してください。また、がん拠点病院のがん相談支援センターで相談にのってくれます。

Q.入浴時の温度は?
A.適温は38~40度です。

Q.用手的リンパドレナージは誰にでもできますか?
A.国家資格を持つ医療従事者で、指定資格を持ち、講習を受けた者ができます。

Q.股関節の人工関節手術後むくみがひどい人へのケアの仕方はありますか?
A.むくみの原因がわからない場合には、病院で相談し、原因を探ることが先決です。リンパ浮腫の場合、心臓に向かって赤ちゃんの頭をなでるようにさする方法はありますが、やってはいけない場合もあるので注意が必要です。

Q.間違った場合は、どのような悪いことが起こりますか?
A.リンパ浮腫の治療でも、心不全、腎不全などの病状がある人は、元の病気が悪化するのでやってはいけません。脚の場合、塞栓症など血管系の病気だと、脚にあった血栓を肺、脳、心臓に飛ばして梗塞を起こす原因となり得ます。誰でも簡単にできるのは腹式呼吸です。「へそに手を当て、ストローを吹くようにまずはふぅーっと長く息を吐く」「吐き切ったら鼻から吸う」「吐き切るときはお腹が凹み、吸った時にお腹が膨らむ」へそ下にあり、両足から来るリンパが合わさる所の弛緩・収縮につながり、リンパの流れを促進します。次に、首の運動です。「前後・左右に倒す」「左右に回す」これを何度かゆっくりと行います。その後、腕を後ろ・前に回す。首は鎖骨のところに影響しますので、腕を回すことで腋窩リンパ節に影響します。

Q.腹式呼吸は座ったままで良いですか?
A.座ったままでよいです。初心者は難しいので、仰向けに寝て膝を軽く曲げ、へそに手をのせて行うと良いです。

Q.弾性着衣は、夜休む際は外した方が良いですか?
A.就寝中は外します。入浴が早い時間の場合には入浴後に装着し、家事やTVを見るなどした後、寝る直前に外します。

Q.静脈吻合手術の適応時期はいつですか?
A.終末期(捉え方は様々だが)にはリンパ浮腫以外にさまざまな浮腫が混ざっています。治療ができないと判断するのは、皮膚状態が悪い場合や腹水がたくさんたまっているなどさまざまな浮腫が混じる場合です。局所麻酔にはなりますが、それに耐えられるだけの体力も必要です。

Q.アルブミン血症の人は手術出来ますか?
A.アルブミン血症の人は(静脈吻合手術を)していないです。

Q.スライド写真に出てきた前立腺がんの男性は、どんなストッキングをはいているのですか?
A.腹水もあったため、包帯を使用しています。

Q.術後運動を教わったがしていないのですが、運動やマッサージをした方が良いですか?
A.リンパ浮腫を発症していなければ、ストレスに感じるほど一生懸命にしなくて良いです。日常生活での予防をしましょう。

Q.リンパ浮腫のサインはありますか?
A.押して戻ってこないのは、すっかり発症した証拠です。なんだか手術した側がだるい、左右を比べた時の太さの違い(元々左右差はあるが)などがサインです。

Q.左右差とは?
A.左右差は個人差があります。発症前との差は1cmと言われていますが、先生によっては否定しています。

Q.乳がん手術後の脇腹のむくみ、腹部がんの鼠径部・下腹部のむくみはどうしたら良いですか?
A.切除したリンパ節の場所によるので一概にはいえませんが、右脇腹だったとしたら、右の乳がんの人は右腋窩リンパ節を切除しているので吸収する場所がなくなっているため、右足付け根のリンパ節に向かってゆっくり流します。専門的にするときには他の健康なリンパ節を探して行います。マッサージは赤ちゃんの頭をなでるぐらい優しく行います。鼠径部・下腹部のむくみには、ストレッチの入ったスパッツを履く、女性の場合ナプキンを圧迫材料に使うこともあります。

Q.リンパ管静脈吻合術は腕のリンパ浮腫に対してもできますか?
A.できますが、直接当院で診ていないため、細かいことには答えられません。

 日  時 :2020年4月21日(水) 15:30〜17:00
 講  師 :上馬庭 昌恵先生(医療法人にゅうわ会 及川病院緩和ケア病棟師長)
 会  場 :オンライン(配信場所:ウィッグリング・ジャパン事務所)

※今後の医療セミナーの予定はこちら

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