抗がん剤の副作用による脱毛に悩む女性たちを支援しようと、福岡市のNPO法人「ウィッグリング・ジャパン」が、女性のがん患者に無償でかつらを貸し出す活動を続けている。
かつらの提供者の多くも、かつてがんと闘った女性たち。元患者と患者とをつなげる活動を始めて2年。利用者は北海道から沖縄まで約300人に上る。(金秀運)
※現在、レンタル料は無料ではなく1年間5,500円となっています。詳しくはこちら
希望とかつらのリレー
「かつらを手にした患者さんは、がんと闘った人から勇気や希望、元気を一緒に受け取っているんです」。若者や買い物客でにぎわう同市中央区天神の一角にあるウィッグリング・ジャパンの事務所兼サロンで、代表の上田あい子さん(37)が穏やかな笑顔を見せた。
活動のきっかけは2年前の春。幼なじみに乳がんが見つかった。告知を受け、入院や治療方針などさまざまな決断を迫られ、苦悩する日々。おしゃれにも人一倍気を遣っていた幼なじみがふさぎ込み、投げやりになっていく姿に、上田さんは心を痛めた。
「自分に何かできないかな。少しでも救いになれば」と、がんを克服した知人から借りたかつらを手渡した。完治した人の存在を知り、幼なじみは明るさを取り戻し、今は社会復帰している。
がんを克服した女性と、闘病中の女性をつなぐーーーーーー。患者グループなどを通してかつらの提供を呼びかけると、元患者を中心に全国から約600個が集まった。新品のかつらは1個10万円前後になる。患者にとっては経済的負担になるが、それ以上に「私だけじゃない」という思いが闘病生活を支える力になると、上田さんは考える。
サロンで直接患者の相談を受けるチーフアドバイザーの満安諏美さん(66)も30代でがんを発病し、2度の再発を乗り越えた。経験者として「がんになった切なさも悔しさも分かる」と言う。一方、かつらを提供してくれた元患者には「再発を恐れ、なかなか手放せなくなったものと決別してくれた」と感謝する。
帽子をかぶり、下を向いてサロンを訪れた患者が、笑顔で帰っていく。「私たちの存在で患者さんが元気に力強く羽ばたいてくれたら」と満安さん。上田さんは「必要としてくれる人が一人でもいる限り、細く長く続けていきます」。
サロンは毎週月曜日と第4土曜で、要予約。かつらの貸し出し期間は1年。利用には会員登録が必要で、入会費2,100円、年会費3,150円。
(※2018年現在は月2回の開催となっており、日程はホームページでご確認ください)