タオルで手作りした帽子で、身も、そして心も温められれば――。そんな思いで福岡県大刀洗町の末次由美さん(45)は「タオル帽子」をがん患者に贈る活動を始めた。自身も乳がんを患い、治療の副作用で髪が抜けて落ち込んだとき、タオル帽子に「温められた」経験がある。2年前には仲間とボランティア団体「あいう笑がお」を結成し、これまでに約370個を患者の元に届けてきた。「笑顔になって」というメッセージを添えて。
心も温まるタオル帽子 ~闘病機にがん患者に贈る~
2010年11月、末次さんは乳がんと診断された。1ヵ月後に左胸の全摘手術を受け、抗がん剤治療へ。副作用で「全身の骨が裂けるような痛み」が続き、髪はごっそり抜けた。
外出時はかつらをかぶればいいが、摩擦で頭皮が痛くなり長時間はつけられない。かといって家族にそのままの姿を見せるのは、心配させるようで心苦しい。「それでも明るく接してくれる家族に涙を見せたくなくて、風呂場で毎日泣いていました」。変わっていく自分の用紙に耐えられず、ふさぎ込む日が増えた。
そんな末次さんにタオル帽子を届けてくれたのは、15年来の友人だった。縦30センチ、横62センチのタオルを筒状に縫い、ニット帽のような形に仕上げられていた。
毛糸のようにチクチクした感触がない優しい肌触りで、かぶってみると「ふわっとして温かい」。
友人から、岩手県の市民団体などが作っている物を参考に手作りしたと聞き「私を思ってくれる気持ちの温かさ」も伝わってきた。
以降、自宅ではタオル帽子を被って過ごすようになり、風呂場で泣く回数は減った。「私に何かできることはないかな」と力も湧いてきた。友人に相談すると「同じようにつらい思いをしている患者さんはたくさんいるはず」と背を押され、活動をしようと決めた。
手術から2ヵ月後の11年2月、「あいう笑がお」を設立。近所や知人に呼び掛け、月1回、自宅にあるタオルを持ちよって帽子作りを始めた。抗がん剤治療の副作用で体調が優れない日があっても「みんなが待っていてくれる場所がある」との思いが支えになった。
夫(43)と、当時高校生だった長女(20)も最初から参加してくれた。今では約120人のボランティアが活動。女性のがん患者にかつらを貸し出す福岡市のNPO法人「ウィッグリング・ジャパン」と連携して講習会を開くなど、人の縁を広げている。
抗がん剤治療は半年で終わり、髪も戻ってきた。「活動を通していろんな人と出会えて、生かされて、私でもできることがあるんだと希望の光が見えてきました」と末次さん。再発の不安を抱えつつも「つらいときこそ笑顔でいれば、きっと回りも笑顔になれる。活動を少しでも長く続け、助けてくれた人たちに恩返しをしたい」と前を向く。
女性がん患者の語り合う場解説 月1回、福岡市に
※2018年10月現在、行っておりません。
抗がん剤の副作用で髪を失った女性がん患者にウィッグ(かつら)を貸し出す活動などに取り組むNPO法人ウィッグリング・ジャパン(福岡市)は毎月第4月曜の午後2時~4時、福岡市中央区天神2丁目2の13サンベアービル3階で、女性のがん患者と家族が集い、悩みや闘病体験を語り合う「ウィッグリングカフェ」を開く。
27日が1回目。夫との向き合い方、出産に関することなどは、男性がいると話づらいとの声があり、女性だけを対象にした。同法人のボランティアスタッフ(がん経験者)が対応。日によっては、心の問題や乳がんに詳しい女性医師も加わる予定。がん治療を終えた体験者も参加できる。