がんの中には、予防できるがんもあります。
その中でも今回は「ワクチン」で予防できるものについて久留米大学先端癌治療研究センター所長・教授 山田 亮先生にお話しいただきました。
肝細胞がん
肝細胞がんになる可能性のある「B型肝炎ウイルス」はとても感染力が強く血液や体液を介して感染するため、医療従事者もその感染の疑いのある血液検体を扱う時は、手袋を二重にして、それでも浸透するので手袋をどんどん変えながら処置しています。しかし、ワクチンでの予防や抗ウイルス薬により、感染していても駆除することが可能になりました。
子宮頸がん
子宮頸がんになる可能性のある「ヒトパピロマーウィルス」は、感染力はそれほど強くないですが、ごくありふれた、そこら中にあるウイルスで、男女ともに性行為で感染します。コンドームの使用では完全には防ぐことは難しく誰でも感染する可能性があります。多くの人は症状が出ないため、感染しているのかわからないまま他の人に感染させてしまうことがあります。有効な抗ウイルス剤は現在ではまだないので、唯一予防できるものはワクチンです。
子宮頸がんワクチン
日本では2010年に定期接種のワクチンとして公費で13~16歳の女子に接種されるようになりましたが、このワクチンによる副反応が出たという一部の報道により2013年から厚生労働省からの「積極的な接種勧奨の差し控え」という通知によりワクチンを「打たない方がよい」という誤った認識をされている状況が今も続いています。(対象年齢では今も公費で接種できます)。
WHOによると日本の子宮頸がん罹患率は、定期接種を導入している西欧諸国に比べて多く、子宮頸がんの広がりが公衆衛生の権威になっていると言われています。また、2019年1月にはWHOの理事会で70か国以上が子宮頸がんの排除に向けた世界的戦略を策定する決定を支持しており、日本の状況は世界的に遅れています。
日本で承認されている子宮頸がんワクチン
子宮頸がんの原因になるヒトパピロマーウィルスにはたくさんの種類があります。特に子宮頸がんにハイリスクなウイルスは、「16型」、「18型」です。日本で認可されているワクチンはその2種類のウイルスに有効な『2価ワクチン』、またはその次にリスクのある「6型」、「11型」のウイルスにも有効な『4価のワクチン』が承認されています。そのワクチンでは70%の割合で子宮頸がんを予防できますが、世界では更に多くの型に対応した『9価ワクチン』が承認されており、こちらは90%の予防率です。
2019年11月には日本産科婦人科学会が内閣官房長官宛に、ワクチンの積極的推奨を速やかに再開するよう要望書を出していますが、まだ推奨は再開されていない状況です。
感想
・子宮頸がんのワクチンは、打ってはいけないと思っていました。正しい知識を持つことが大切だと気付きました。
・定期接種を打てる年齢を過ぎたら補助がないので結構高額なのですね。
・日本でも9価ワクチンが承認になるといいのにと思います。
日 時 :2019年12月20日(金)15:30~17:00
講 師 :山田 亮先生(久留米大学先端癌治療研究センター所長・教授)
参 加 費 :1,500円(資料、ドリンク、お菓子付き)
会 場 :久留米大学福岡サテライト(福岡市中央区天神1-4-2 エルガーラオフィス6階)
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